アティワ レビュー
『アティワ』
1-4人、30分/人
魅力を三行で、
- 急拡大するリソース
- ゆるいプレイ感とシビアな手番価値評価
- 長すぎないプレイ時間
「フルーツコウモリ」という動物がパッケージのモチーフになっているこのゲームでは、「遥か先までフルーツを求めて飛び立ったフルーツコウモリが、巣に帰る途中でフルーツの種をフンとしてばらまくことで、金の採掘等で荒れた保護区に果樹の森林が再生する。」というボードゲームとしては少々変わったテーマを採用しています。
『アグリコラ』で有名なウヴェローゼンベルグさんの2022年話題の新作です。
メカニクスとしてはワーカープレイスメントを主軸に、リソース管理に大きな特徴を持つゲームです。ワーカーにより得られたリソースは、サプライから手元に貰えるのではなく、個人ボードから外れて手持ちの土地のカード上の対応する場所に置かれます。
リソース獲得時は個人ボード(11)にあるリソースを、土地(13)に移動する
また他のゲームでもよくあるように、個人ボードで空いた場所に見えたアイコンが収入となります。ただしここにも少し特徴があり、収入中に連鎖的に収入が増えるのです。各列を空けた収入として、その下の列のリソースが貰えます。そして、収入は個人ボードの上から処理していきます。これにより、収入のタイミングで一気にリソースが増えるのです。つまり、これら急拡大するリソースを置くための土地をしっかりと用意しておけるかが勝敗を分けるポイントになります。
個人ボードをすべて空けるとこうなる。
上から野生動物は樹木を産み、樹木はフルーツを産み、フルーツはフルーツコウモリを産む。下二列はお金を産む村人と、食料を産むヤギ。
このように挙げていくとリソース管理が難しそうに感じられますが、ワーカーを置ける場所には比較的余裕がありなんとかなるように作られています。この辺りは最近のゲームらしいバランスです。
アクションスペースの選択肢は多い。もちろんどうしても収入で1~2個リソースが置けず無駄になってしまうくらいのことはまま起こる。
ここまででゲームの各要素の概要をお伝えしましたが、最後に注目すべきはこのゲームに「無い」要素についてです。
近年のこのタイプのゲームには珍しく、「個人能力」や「個人目標」といった要素がありません。最終的には個人ボードで見えている数字がそのまま勝利点となり、リソースを勝利点に変換するようなシステムはほぼありません。またウヴェさんの作品に頻出する、「ユニークカード」「ユニーク能力建物」「パズル要素」などもありません。
これらをあえて削ったことで、初回のプレイしやすさやプレイ時間の短縮が実現されているように感じました。逆に言えばこれらの要素からなる戦略選択による差別化はできず、一手一手の地味な微差の積み重ねが点差につながるシビアなゲームという見方もできるでしょう。しかし前述したように、どのアクションをしてもいい事が起こり急速に手元が拡大するので、プレイ感は重くないという点が素晴らしいです。
あるゲームの最終形。大量のリソースを獲得できて単純に気持ちいいし、その状態が直接勝利点に繋がるのでわかりやすい。
随所にモダンなバランスをとりながら、古き良きワーカープレイスメントのジレンマも存分に詰まっています。複雑で美麗な遊びがいのある重ゲーが次々産まれる現代において、とてもスマートな「ちょうどいい」ゲームでした。