比較レビュー スマートフォン株式会社とモバイルマーケット
結論から言えば、
スマートフォン株式会社:株式会社
モバイルマーケット:マーケット
です!
ふざけているわけではなく、実際にプレイ体験としてこのように感じるのです。比較うんぬんの前に、まず両ゲームともしっかり名前通りのプレイ感で、テーマがゲームに落とし込まれている点は素晴らしいです。当たり前のようで、難しいことです。
とはいえ説明不足なので本題に入ると、両者で違う点としては以下のような部分があると考えます。
スマートフォン株式会社:ランダム要素が少ない、マップがある、個人ボードがない、特殊効果が少ない
→盤面情報を整理しやすく、面白さが対人の読みあい部分に集中されている。
モバイルマーケット:ランダム要素が多い、マップがない、個人ボードがある、特殊効果が多い
→手元の能力改善に爽快感があり、戦略化していく面白さがある。
ここから少しふざけます。テーマの部分をより深く比較すると、それぞれ以下のような世界観が広がっています。
スマートフォン株式会社:世界全体で流通も含めコントロールする、顧客の顔が見えない、勝敗は自分の実力次第
→気分はまさに経営者。
他社の動向も全体を俯瞰して見て、自社戦略を最適化していく。
負けた時は全て自分で責任を負うが、報酬(最大の点数)も大きい。
客はおろか従業員の顔も浮かばないが、スティーブ会長のことだけは気になる。
モバイルマーケット:日々変化する現場の需要に対応していく、顧客も従業員も顔が見える、勝敗は時の運に左右されることも
→現場の責任者として四苦八苦する。
他社を気にしすぎても仕方ない部分があり、自社のアピールに力を注ぐ。
多様性のある人材を確保し優秀な技術を現場にもたらせる。
負けても上のせい、環境のせいだと愚痴れる。
真面目に戻ります。
ボードゲームを遊ぶ人の価値観は多様で、特にこの両ゲームのようなキャッチーなテーマ&1時間を超えるプレイ時間のゲームでは、比較の際にテーマ部分を重要視する方もいれば、ゲーム性を重要視する方もいると思います。どちらも特徴があるゲームで、いろんな方にとって楽しめるのではないかと思っています。
最後に非常に真面目に締めくくります。
ここまで両者の違いに注目してきましたが、共通していることとしてゲーム終了までみんなが面白いということが言えると思います。
値付けや競り合いがシビアなゲームでは、途中で勝敗がはっきりしてしまったり、終盤やることがなくなったりしがちという難しい課題を本質的に抱えています。この課題を特段変わった仕組みを入れることなく解決している両ゲームは、素晴らしいバランスと言えます。
その他にもスマートフォン株式会社では大きい点数オーダーの中でも接戦に落ち着くゲームバランス、モバイルマーケットでは決して相性が良くはない「競りによる対人の読みあい」と「手元の能力改善」というメカニクスの綺麗な融合、など、深堀りするとキリがないほどの魅力が詰まった両ゲームです。
(点数のキューブの置き方が間違っているが、)265 vs 256 vs 252という接戦だったスマートフォン株式会社のプレイ記録
最初に戻ると、両ゲームを遊ぶことでスマートフォン株式会社の経営者気分も味わえるし、マーケットの現場責任者の気分も味わえます。どちらもやりがいのある素晴らしい仕事(ゲーム)ですので、ぜひお試しください。
(数奇ゲームズさんの通販ページはこちらから)
アティワ レビュー
『アティワ』
1-4人、30分/人
魅力を三行で、
- 急拡大するリソース
- ゆるいプレイ感とシビアな手番価値評価
- 長すぎないプレイ時間
「フルーツコウモリ」という動物がパッケージのモチーフになっているこのゲームでは、「遥か先までフルーツを求めて飛び立ったフルーツコウモリが、巣に帰る途中でフルーツの種をフンとしてばらまくことで、金の採掘等で荒れた保護区に果樹の森林が再生する。」というボードゲームとしては少々変わったテーマを採用しています。
『アグリコラ』で有名なウヴェローゼンベルグさんの2022年話題の新作です。
メカニクスとしてはワーカープレイスメントを主軸に、リソース管理に大きな特徴を持つゲームです。ワーカーにより得られたリソースは、サプライから手元に貰えるのではなく、個人ボードから外れて手持ちの土地のカード上の対応する場所に置かれます。
リソース獲得時は個人ボード(11)にあるリソースを、土地(13)に移動する
また他のゲームでもよくあるように、個人ボードで空いた場所に見えたアイコンが収入となります。ただしここにも少し特徴があり、収入中に連鎖的に収入が増えるのです。各列を空けた収入として、その下の列のリソースが貰えます。そして、収入は個人ボードの上から処理していきます。これにより、収入のタイミングで一気にリソースが増えるのです。つまり、これら急拡大するリソースを置くための土地をしっかりと用意しておけるかが勝敗を分けるポイントになります。
個人ボードをすべて空けるとこうなる。
上から野生動物は樹木を産み、樹木はフルーツを産み、フルーツはフルーツコウモリを産む。下二列はお金を産む村人と、食料を産むヤギ。
このように挙げていくとリソース管理が難しそうに感じられますが、ワーカーを置ける場所には比較的余裕がありなんとかなるように作られています。この辺りは最近のゲームらしいバランスです。
アクションスペースの選択肢は多い。もちろんどうしても収入で1~2個リソースが置けず無駄になってしまうくらいのことはまま起こる。
ここまででゲームの各要素の概要をお伝えしましたが、最後に注目すべきはこのゲームに「無い」要素についてです。
近年のこのタイプのゲームには珍しく、「個人能力」や「個人目標」といった要素がありません。最終的には個人ボードで見えている数字がそのまま勝利点となり、リソースを勝利点に変換するようなシステムはほぼありません。またウヴェさんの作品に頻出する、「ユニークカード」「ユニーク能力建物」「パズル要素」などもありません。
これらをあえて削ったことで、初回のプレイしやすさやプレイ時間の短縮が実現されているように感じました。逆に言えばこれらの要素からなる戦略選択による差別化はできず、一手一手の地味な微差の積み重ねが点差につながるシビアなゲームという見方もできるでしょう。しかし前述したように、どのアクションをしてもいい事が起こり急速に手元が拡大するので、プレイ感は重くないという点が素晴らしいです。
あるゲームの最終形。大量のリソースを獲得できて単純に気持ちいいし、その状態が直接勝利点に繋がるのでわかりやすい。
随所にモダンなバランスをとりながら、古き良きワーカープレイスメントのジレンマも存分に詰まっています。複雑で美麗な遊びがいのある重ゲーが次々産まれる現代において、とてもスマートな「ちょうどいい」ゲームでした。
「アルナックの失われし遺跡」の魅力をシステムから紐解くレビュー
2021年5月17日、毎年恒例のドイツボードゲーム年間大賞のノミネート作発表がありました。エキスパート大賞に名を連ねたボードゲームを眺めていると、一際目を引くテーマとアートワークの作品がありました。それが「パレオ」です。
大丈夫です、ブログタイトルを間違えてはいません。ノミネート作の中で見た目もぱっと見のルールも最も地味だった作品が「アルナックの失われし遺跡」でした。ただこのゲーム、プレイしてみるととてもすっきりと、かつがっつりと遊べる神ゲーだったのです。2021/5/29現在、国内では入手難なようですが、BGAにてなんと無料で遊ぶことができます。
Play board games online! • Board Game Arena
ルールの解説は偉大なる別記事様にお任せしまして、本記事ではこのゲームがいかにして神ゲーとして成り立っているのかを、システムの観点から注目してみたいと思います。
まずこのゲームに登場するシステムをご紹介します。大きく分けると、
- デッキ構築
- ワーカープレイスメント
- リソース変換
の3つの柱から成り立っているゲームと言えます。これらは特に近年のゲーマーズゲームとしてどれも非常に人気のあるシステムになっています。ではこの組み合わせならどんなゲームでも面白くなるかというと、そう上手くはいきません。なぜならこれらのシステムには長所と同時に短所も存在し、実装の勘所を間違えるとただ重いだけのゲームが出来上がります。
結論から言うと、このゲームは各システムの短所が消え長所だけが光るように設計された非常に緻密で繊細なゲームなのです。では具体的にどのようにしてそれが実現されているのか、各システムごとに考察してみましょう。
1.デッキ構築
カードの回る頻度によっては大味になったり消化不良になったりする短所を消しています。
このゲームではカードを使用するというアクションが手番の中心の一つのとして存在します。その実装はシンプルで、「比較的弱い初期デッキから初めて、カードを購入、除外することでデッキを強くする」というものです。カードの種類はアイテムと遺物の二種類があります。
購入した時の動きが肝で、アイテムはデッキの下に、遺物は即時その効果を発揮した後捨て札になります。また遺物は二回目以降手札から使う場合、石板というリソースを必要とします。このメカニクスにより購入したカードが比較的早く使用でき、かつドンドン使って大味に拡大していくということもない、絶妙なカードの周りを達成しています。少し頑張れば購入と同じラウンド中にアイテムを使うこともできるし、遺物を買って目先の報酬が欲しかったとしてもその後有効活用するには石板の確保が必要になってくるのです。
またアイテムと遺物の供給におけるメカニクスもエレガントです。遺物は手札からの使用に石板を必要とするため、序盤に買いすぎても手札を圧迫するのみになる恐れがあります。このゲームでは購入できる遺物:アイテムの割合が、1ラウンド毎に1:5→2:4→…→5:1となっていきます。これによりゲームの流れに沿ってより効果的なカードの方がより多く供給されることとなります。
2.ワーカープレイスメント
アクションの幅が広がりすぎ、リソース獲得方法が煩雑になりすぎるという短所を消しています。
このゲームでは1.で述べたシステムにより、リソース獲得の多くはカードによって解決されます。これをワーカープレイスメントの方でも幅広く選択肢を持たせてしまうと、アクション選択が苦痛になってしまう場合もあるでしょう。このゲームではワーカーは2人のみで、ワーカーが増えることも、維持費がかかることもありません。まずこの点が上手くシンプルにまとめられています。
またワーカープレイスは大きく分けて二種類で、各種資源を少数得られる、序盤や資源1足りない現象の時に用いられるプレイスと、より多くの資源を得られるがコストも高い探検プレイスからなっています。後者はこのゲームの最もユニークなポイントであり、作品のテーマの根幹にもなっているメカニクスとなっています。後者のプレイスはそこにワーカーを置くまでどんなリソースがもらえるのかわからないのです。これは探検のワクワク感をもたらす一方で、全体を「運ゲー」にしてしまう致命的な危険性を孕んでいます。ここのバランス調整が素晴らしいのです。
具体的には、探検プレイス予定地にワーカーを置くと新たなプレイスがランダムに置かれて即座にそのリソースを獲得できます。この時同時に偶像と呼ばれる使い切りのチップを獲得でき、これはフリーアクションとして任意の資源をもたらします。この偶像が肝で、ランダムに降ってきたリソースに加えて柔軟性の高いリソース権も獲得できるため全体のばらつきを抑えることに成功しています。加えて、新たなプレイスには守護者と呼ばれるリソース変換先も追加されます。書かれたリソースを支払うと守護者を退治して得点になるというメカニクスで、このリソース変換先に対する優先アクセス権を持たせることで、ランダム要素の強い探検に更なるインセンティブを与えています。ランダム性がもたらすワクワク感と、ゲームバランスとを両立させた素晴らしいシステムと言えます。
3.リソース変換
リソース変換競争に出遅れてその差を埋められないという状況になってしまうとゲームが間延びするという短所を消しています。
一般に獲得したリソースを得点に変換するというメカニクスが実装される場合、同時に早く変換した場合にインセンティブを与えるメカニクスも実装されます。こうしないとリソースをため込んで終盤一気に変換する戦略が最強となり、最適解を探すのに非常に長い時間が費やされてしまうためです。
このゲームでも当然1.と2.で得られたリソースを得点に変換しますし、早さにインセンティブを持たせています。まず変換先は大きく3つで、カード購入、守護者の退治、研究、となっています。前2つは既に触れましたので、本項では研究について考察していきます。
研究では対応するリソースを支払って手帳と拡大鏡の2つのトークンのうちいずれかを1つの研究トラック上で進めることができます。このトラックの途中には到着が早いプレイヤーが獲得できる資源が置かれています。一方このトラックでは途中に分かれ道や合流があり、複数のリソースの組み合わせで進めることが可能で、後発でも大きく損することなく進められる道が残っています。また拡大鏡のみをひたすら進めるのか、手帳もバランスよく一緒に進めるのかで得られる報酬が異なり、ここでも早取りのインセンティブに対し後発の取れる戦略の幅を確保しています。
3つの変換先を合わせると手持ちの資源の変換先がどこかにあるような状況が維持され、早取りに遅れても、ワーカープレイスで予想外のリソースが得られても、しっかり変換できる先が用意されています。一方もちろん最終的にはインセンティブを上手く活用し、効率良い変換を達成できたプレイヤーが勝利できるデザインにはなっており、終盤まで勝ちが確定することなくかつ納得感のある勝敗が付く、全員が楽しみ続けられるバランスに仕上がっています。
他にも本記事で書ききれなかったような細かな気遣いが、このゲームには随所にちりばめられています。突飛なルールがあるわけでも、遊びきりの驚きがあるわけでもありません。中田ヒデや本田圭佑ではなくても、長谷部誠も偉大なる選手の一人であり、むしろより長く愛されているとも言えるかもしれません。
真摯にゲームバランスが追求され磨かれた本作品をぜひ遊んでみてはいかがでしょうか。きっと心が整いますよ。
システムで振り返るドイツ年間ゲーム大賞
システムって美しいですよね。(以下前置きです。)
ボードゲームのほとんど全ては、その数の大小や期間、割合の違いはあれど、人間によってより面白くなることを目指してデザインされたものであるということに異論はないかと思います。
このデザインという作業に当たって、特に近年では体系化され分類されたメカニクスによる各アウトプットを元に、それらを組み合わせて新しい「面白さ」を生み出すような手法が取られることが、デザイナーノートなどから伺える機会が増えてきました。このメカニクスの体系化はまさに進化中の分野であり、様々な分類法がある状況です。
本記事ではある程度大きな括りのメカニクスの集合体を「システム」と呼び、過去の名作の中でどんなシステムが輝いているのかを考察したいと思います。今回は、簡単に名作を探してこられて、しかも年代の移り変わりも見られる便利な「ドイツ年間ゲーム大賞」を題材にします。
(本題スタート)
では早速直近20年分のドイツ年間ゲーム大賞を列挙し、メインとなるシステムを併記してみましょう。なおシステムの記載に際しては、名著「ゲームメカニクス大全」を大いに参考にしております。
<凡例>
- 受賞年
ボドゲタイトル
主なシステム
- 2001年
タイル配置
- 2002年
ヴィラパレッティ
身体的アクション
- 2003年
タイル配置
- 2004年
チケットトゥライド
ネットワークビルド
- 2005年
ナイアガラ
アクションプロット
- 2006年
ネットワークビルド
- 2007年
ズーロレット
セットコレクション
- 2008年
レース
- 2009年
デッキビルド
- 2010年
ディクシット
ターゲットヒント
- 2011年
クワークル
タイル配置
- 2012年
キングダムビルダー
ネットワークビルド
- 2013年
花火
制限コミュニケーション
- 2014年
キャメルアップ
賭け
- 2015年
コルトエクスプレス
アクションプロット
- 2016年
コードネーム
制限コミュニケーション
- 2017年
キングドミノ
タイル配置
- 2018年
アズール
セットコレクション
- 2019年
ジャストワン
制限コミュニケーション
- 2020年
ピクチャーズ
制限コミュニケーション
まず以上はあくまで私の主観によって、根幹となるシステム一つだけを抜き出したリストになります。もちろんナイアガラにはセットコレクションの要素もありますし、キャメルアップにはレースの要素もあります。
まとめてみると計10種類のシステムが出てきました。その内最も多かったのは、
タイル配置(2001,2003,2011,2017年)と制限コミュニケーション(2013,2016,2019,2020)です。これらはある程度年代で分かれており、時代の流行を反映していて面白いです。
またタイル配置やネットワークビルドはセットコレクションの下位概念とも考えられ、「何らかのセットを集めて得点を獲得する」というシステムを根幹に置いたゲームが約半数を占めることになります。この理由としては、得点手段の把握が容易、プレイ時間の短縮が容易、全年齢に受け入れられやすい具体的なテーマとの親和性が良い、といったシステムの長所が考えられます。
しかしながら特にエキスパート賞が新設、定着して以降の近年では、より短時間でプレイが可能なコミュニケーションゲームの受賞が目立ちます。何らかの制限の元情報をやり取りが行われ、カオスが出来上がるという体験は非常に楽しいものです。またこの「制限」の度合いについても軽くなっている傾向にありますし、そもそも得点のルールはあるものの最早その獲得を主眼に置かないゲームの受賞も増えています。「得点による勝ち負け」という分かりやすい目標を捨てることは、ゲームを面白くするには非常に難しい要素となりますが、システムの体系化が進んできた現代において、数学的な得点獲得の移り変わりによるゲーム展開だけではなく、その場で生じる空気感による満足度をもデザインできる時代に変遷しているように感じました。
一方いわゆるゲーマーズゲームと呼ばれるようなゲームにおいて人気の高い、オークション、ワーカープレイスメント、拡大再生産、ドラフトといったシステムは、ここ20年の大賞にはほぼ登場しません。これらのシステムはいずれも抽象的なテーマとの親和性が高く、また得点の発生が連続的でありゲームとして成り立つ(=順位の差がつく)までに時間がかかるという特徴を持ち、大賞のターゲットからは外れていると考えられます。こちらはまた機会があれば別途まとめてみたく考えています。
最近では一回遊びきりのゲームや、謎解き、ストーリーテラー系のゲームも増えてきています。「このゲームの目的は最も多く得点を獲得することです。」という定番のフレーズも、過去の流行になりつつあるのかもしれません。
きらめく財宝(Funkelschatz)
『きらめく財宝』
2-4人、20分
魅力を三行で、
- 超簡単なルール
- 大人も楽しめるギミック
- お宝を集めて隠すワクワク感
ドイツ年間ゲーム大賞2018のキッズ部門大賞を受賞しました、「きらめく財宝」のレビューです。
キッズ大賞らしく、「子どもドラゴンたちが見つけた氷づけのお宝。ゲットするために炎で溶かそうとするも子どもなので力不足。そこでパパドラゴンに溶かしてもってお宝をゲット!」というかわいらしい世界観がとても素敵です。
ゲーム中では氷の柱に見立てた青いリングの層をステージ中央に設置します。このステージは、ゲームの外箱の底にタイルで組んだ足場の上にボードを乗せた立体的なものです。そしてその柱の中に5色の宝石を詰め込みます。
ステージの上に…
リングを重ねて柱を立て、宝石を入れる
各プレイヤーは4匹の子どもドラゴンの内1匹を担当します。そしてパパドラゴン(親)を1人ずつ回していきます。パパドラゴンの役目は氷を溶かすこと、つまりリングを外すことです。
リングを外すと当然中に詰まった宝石がステージに散らばります。これを子どもたちで山分けします。ここがこのゲームの肝となるポイントで、子どもたちはパパドラゴンが氷を溶かす前に、予め今回獲得したい宝石の色を決めておきます。パパドラゴンの左隣の人から時計回りで今回獲得したい(=最も多く落ちそうな)色を決め(パパドラゴン役の人も含む)、リングを外した後にステージ上に残った宝石の内自分が選んだ色を獲得します。色を決めるとき、既に選ばれた色は選べません。
パパドラゴンと4人の子どもたち
今回欲しい色を決めたあとパパドラゴン役の人が一番上のリングを外すと…
宝石がステージに散らばります
氷を溶かすとき、パパドラゴンはちょっとした工夫をすることができます。一番上のリングを外すことさえ守れば、外すときに力加減を調整して自分の色を多く落とすよう努力して構いません。また、画像をよく見るとステージにはいくつか穴が開いています。先程「ステージ上に残った宝石」と書いた通り、穴に落ちた宝石は獲得できません。この一応頑張る一工夫が意外に盛り上がるポイントです。選ばれなかった色の宝石は穴に入れておきます。
ステージに残った宝石。今回は黄色を選ぶのが最も良く、紫は最悪だった。
そして手に入れた宝石は自分の宝石箱に入れます。ステージの四隅には子どもドラゴンがそれぞれ刺さっていて、ステージの外壁との間に穴があるのでそこに獲得した宝石を入れます。これは自分の宝石をしまっておくワクワク感も産み出しますし、現在の点差を気にせずゲームを楽しく進められる良いギミックだと思います。
宝石はマイ宝石箱へ
リングを一つ外して宝石を配ったら、時計回りにパパドラゴンを回して次のラウンドが始まります。これを全てのリングが取り除かれるまで繰り返し、最後に最も宝石を集めたプレイヤーの勝利です。ゲーム終了時にはボードを上げて各プレイヤーの穴の中の宝石を数えます。これもドキドキ感があっていい感じです。
ゲーム終了時のボードの下。中央はステージの穴に落ちていった宝石。
キッズ大賞だけあって非常にシンプルなルールですが、子ども心をくすぐるような細かな仕掛けが随所に散りばめられています。また大人が遊んでも盛り上がるポイントもあり、大賞受賞も納得の作品だと思います。
ぜひ小さいお子さんと、友達と、遊んでみてください。
徹底攻略『惨劇RoopeR』②惨劇セット
惨劇RoopeRの魅力の1つに、惨劇セットを変えることでガラッと展開の違うゲームにできるという点があります。徹底攻略『惨劇ルーパー』の第2回のテーマは「惨劇セット」です。
2018年9月時点で公式から発表されている現行の6セットについて、解説していきます。「Basic Tragedy X」を基本セットとして、各種の特徴を考えます。
- First Steps
大きな特徴はルールXが1つである点と、「マイナス」の存在である。初心者向けにルールXが1つで分かりやすくなっている一方で、「マイナス」という役職隠しに強い役職を混ぜることで序盤での役職バレを防いでいる。
- Basic Tragedy X
「キーパーソン」、「フレンド」の存在とそれらを死亡させる役職、事件。またボードとキャラクターへの暗躍カウンター配置による敗北はこのゲームの基本となる要素。「ウィッチ」「タイムトラベラー」周りの敗北条件は少し変化球で、「ファクター」をめぐる脚本家能力の変化は主人公、脚本家両者に難しい判断を迫ります。まずはこのセットを遊び尽くそう。
- Midnight Zone
ルールに則って嘘が付けるセット。役職を騙れる「ニンジャ」、不安臨界に関係なく事件を起こす「ゼッタイシャ」、同エリアにいる犯人の事件を発生させなくする「プロフェシー」あたりが特徴。事件としては「偽装事件」が楽しい。好きな事件を書いて主人公を脅すとよい。
- Mystery Circle X
旧版のMystery Circleとはちょっと違っているがそちらは割愛。事件に焦点を当てたセットで、事件が発生するとEXゲージが1増加する。EXゲージを参照する「ドリッパー」「メイタンテイ」「セラピスト」辺りは特徴的。また「ツイン」がルール上存在しうるというだけで、実際には存在しなくても犯人特定を難しくさせる。脚本家自身が処理を間違えないように注意。事件としては「クローズドサークル」「銀の銃弾」などの面白いものが揃い、1ループ内での場面転換やパズル要素に使える。
- Haunted Stage A
旧版のHaunted Stageとはガラッと変わっている。キャラクターを死亡させる要素と死体の数を参照する要素がてんこ盛り。また「ヴァンパイア」「ウェアウルフ」「ナイトメア」の三大怪物はかなり殺意が高い。基本的には怪物の正体を突き止めさせてその能力を封じさせるか、バタバタとキャラクターが死亡していくのを止めさせる脚本になる。意外とわかりやすいセット。イレギュラーを入れて怪物を2体にすると酷い脚本が作れる。
- Weird Mythology
友好無視をするとEXゲージが1上がる。3までは主人公にとって強力な能力が与えられるが、4になった途端最後の戦いに移るという特殊ルール。主人公は情報を落とすための友好能力に、恐怖を感じる。ゲーム中のEXゲージの増加は意外に脚本家がコントロールできるので、じわじわ恐怖を与える脚本を書こう。ルールYの敗北条件が多様なので、どれだけブラフをかけられるのかを意識するのが重要。
徹底攻略『惨劇RoopeR』①キャラクター
惨劇RoopeR、楽しいですよね。ただこのゲーム結構難しいです。特に脚本家へかかる重圧が凄い。今回の記事は「徹底攻略」と題しまして、特に「オリジナル脚本を書く」上でおさえておきたいポイントをまとめようと思います。この目線が分かると自ずと次のことが分かるようになります。
- 与えられた脚本で脚本家がどう動くべきか
- 脚本家の考えを踏まえて主人公はどう動くべきか
- 脚本をどう書いたらいいか
つまりこのゲームを完全に理解できます。
とはいえこのゲームは要素も多い。ということで要素ごとに分けて紹介できればと思います。第1回目のテーマは「キャラクター」です。
2018年9月時点で、プロモカードも含めた公式のキャラクターは全27種存在します。以下、脚本家から見た特徴をまとめます。基本ステータス等はwiki等にも載っているのでそちらをご参照ください。
- 男子学生
非常にベーシック。友好2でそれほど強くない友好能力なので、序盤にとりあえず能力を打たれがち。ここに絶対友好無視を置くと脚本がやや易化。
- 女子学生
不安臨界が3になった男子学生。日数の深い事件の犯人にすることで序盤の攻防を熱くできる。
- お嬢様
不安臨界1で友好能力も場所依存のため悪用し放題。暗躍貼り付けじゃんけんや、序盤のパズル要素のお供に最適。逆に言うと脚本作成時は詰みに注意。
- 巫女
友好能力がいずれも強力。特に役職を知る方は最強なので、巫女に友好禁止鉄貼りで他の友好を開けさせる系の脚本作成にどうぞ。
- 刑事
旧版の能力が弱すぎて5thにて改定。特に友好5の方はカウンターを乗せて死亡を防ぐという特殊な能力でワクワクするが、おあつらえ向きすぎて意外と脚本の核にはしづらい。放っとかれがちで適当な役職つけやすい便利なおじさんとして使うのが無難。
- サラリーマン
言わずと知れた友好能力自己紹介おにいさん。脚本作成時、核となる役職を置けば易化、パーソンや踏んではいけない系の役職を置けば難化させることができるので調整に便利。
- 情報屋
旧版の能力が運ゲーすぎたので5thで改定。ルールXをばらすという能力は核にもできるが、発動タイミングとルールX間の重要度の調整が難しく、上級者向けか。適当な友好無視とかを置いとくのが無難。
- 医者
能力はどちらも面白そうなことが書いてあるが、出落ち感が否めない。一度友好能力を脚本化が使うと他のループでは当然友好カウンターが置かれないし、友好禁止貼り続けてたら入院患者逃がす脚本だとバレバレだし。不安カウンターを増減させる能力が本体。こちらは意外と強力に働くので難易度調整に注意。
- 入院患者
悪用し放題その2。友好能力を持たないこともさることながら、動かないのは最強。キーとなる役職にすると難化。
- 委員長
友好能力は一見強そうだが、脚本家からみて起こり得ることが(例えば任意のキャラクターの不安を増減させる等に比べて)限られ状況予測しやすいので、能力発動はどうでもいいことがほとんど。逆にこの能力を必須として、使いきり手札を4回使わないといけないパズル脚本は書ける。
- イレギュラー
かなり便利で中級者以上向けの脚本にはもはやレギュラー。最序盤で重要な役職が割れてしまうことなく、友好無視役職を能動的に調べさせることもできて、ルール推測のヒントにもできる。脚本の辻褄合わせにぴったり。
- 異世界人
殺人と蘇生という大胆な能力を持つ。しかし主人公側に任意のキャラクター相手にこの能力を打たせるのは難しく、能力を必須とする脚本は書きづらい。この能力を使われると理論値脚本が突破されてしまうので仕方なく友好無視鉄貼り、その隙にイレギュラーが開く、みたいな使い方が便利。個人的には病院が禁止エリアなのを忘れがちなので気を付けます。ちなみにその名の通り「OWACON」という他のボードゲームからの輸入キャラ。
- 神格
あまりに理不尽に使うと反感を買う。「なんかこのままいけそう…?」と主人公が思った頃に登場して混乱させるくらいが最適。やりたいことを脚本に詰めこんだが、どうしても序盤で重要な役職が割れてしまうパターンが生まれてしまう、みたいなときに終盤まで隠すために使うなど。初心者はそもそも存在をあまり知らないが、上級者は常に神格の存在を恐れて余計な推測をしてしまう「神格のトラウマ」にまで注意できると上級脚本家。
- アイドル
友好能力がまあまあ強くまあまあ重い。頭数を増やしたいときにはちょうどいい。
- マスコミ
歩く脚本破壊器。破格のコストで犯人割れ、ルール割れを引き起こす。特に事件を核とする脚本や惨劇セットの場合、突然突破されるパターンがないか注意しよう。
- 大物
便利な特殊能力を持ち、シリアルキラー、ミスリーダーを始めとする強役職をさらに強くしてくれる。その分不安臨界が4なので、重要な事件の犯人も兼ねさせてバランスを取ると脚本が締まる。主人公側にテリトリーに移動させられ、テリトリー内でのみ睨みを効かす小物と化す。
- ナース
事件を起こす起こさないのせめぎ合いを熱くしてくれる能力を持つ。絶対友好無視が二人いるルールセットの場合、入院患者や黒猫と組み合わせれば簡単に勝ち筋をループ突破に限定した脚本を作れる。
- 手先
悪用し放題その3。不安臨界1はもちろんのこと、友好能力弱め、初期配置選択による役職&ルールY隠しと、完全に脚本家の手先。つい甘えてしまうが無闇に入れないように注意。
- 学者
EXゲージに干渉する唯一無二の能力を持つ。その上ループ開始時に任意のカウンターを配置でき、脚本の意図を完全には透けさせないまま、核となる役職や犯人にすることが可能。
- 幻想
細やかな駆け引き等を無視して暗躍カウンター乗せを可能にする暴力的な特殊能力を持つ。また暗躍を囮に移動や他のカウンターを置くことも容易で、役職や犯人にしやすい。逆に幻想を出しておいてパーソンでなんの犯人でもなく、暗躍も関係ないルールにするのもそれはそれで殺意が高い。
- 鑑識官
いずれの能力も脚本の核にできる強力なもの。一方で友好2の程よく情報落としてくれるおじさんとしても使え、かなり便利。
「事件が重要な脚本に使ってください!」という能力を取り揃える。都市から動かないので便利だが、カウンターの増減にかなり気を遣う。
- 教師
学生のいずれかを核とした脚本の抑止力として使える。逆に学生を少なくすれば役職を埋めることも可能。ただのパーソンとして頭数を増やすことも可能で、便利屋。
- 軍人
能力はいずれも強力で、特に主人公の死亡を阻止する能力は脚本の核の1つとして魅力的。友好無視が割れてくれる病院初期配置としても貴重。
- 転校生
前半に殺意が高い要素がある脚本で、それを抜けた後半に出して役職を撹乱させるのに使える。また非常に軽く暗躍カウンターを取り除ける能力を持つので暗躍周りの敗北条件の突破口として用意するのも良いアクセント。
- 黒猫
神社に暗躍カウンターを置く、事件を必ず何も起きなかったと言える、と非常に陰湿な嫌がらせができる。嫌な事件を脚本上見せておき、その隙に真の敗北条件を整えるための囮に使うと殺意が高い。主人公にとって良いことが1つも書かれていない素晴らしいキャラクター。
- 女の子
すぐに事件を起こせるが、すぐに友好能力を使われる。友好無視役職にして役職のヒントにするも良し、キャラクターの移動が核となるような脚本で主人公側にアドバンテージを持たせるも良し、難易度調整に使える便利なキャラクター。