ローランド

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『ローランド』

2-4人、120分

魅力を三行で、

  • できることが拡大していく喜び
  • 柔軟な戦略性
  • 自己都合と協力のバランス

 

この『ローランド』というゲームでは、その名の通り低地を舞台に、海からの水害へのリスク管理をしながら自分の農場を拡大することが目的です。なぜわざわざそんな土地で農業をするのかはわかりませんが、肥沃な土地は既に他のボドゲで開発され尽くしてしまったのでしょう。

このゲームでは三種類の資源を基に、ヒツジや建物や柵を作って自分の農場を豊かにしていきます。ここでまず第一の特徴として、建物や柵を作る際にはプレイヤーごとに配られる「収入マット」の上から除いて自分の農場ボードに配置します。なぜ「収入マット」なのかというと、建物や柵が除かれた下には絵が描かれていて、それに応じたモノが収入フェイズに得られるからです。

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収入マットは最初は全て埋まっている


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 全て配置するとこうなる。資源やお金がもらえる。

 

 また農場の施設を作ったりヒツジを売り買いするためには、資源やお金の他に労働力が必要です。第二の特徴はこの労働力にあります。

このゲームでの労働力は2, 3, 4と番号の付けられた3人の労働者で、増えたり減ったりすることはありません(みんな給料も貰わずご飯も食べない優秀な人材です!)。この数字は「アクションポイント」と呼ばれ、数字が大きいほど一人でより多くのことができます。例えば資源を引くアクションであれば、アクションポイントの数だけの資源カードを獲得します。この有能度の異なる3人の労働者を、どのような仕事に配置するかがこのゲームの要となる部分です。仕事には「建物を建てる」「柵を作る」など計5種類があり、他のプレイヤーに先着順で邪魔されることなどはなく自由に仕事を選ぶことができます。
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 色んな仕事をして、豊かなmy農場を作る

 

しかしここまでのルールでは他プレイヤーとの関り合いが薄く、ソロプレイ感が出てしまいます。これをすっきり解消してくれるのが、最大の特徴である「堤防」システムです。

エリア共通のボード上には海岸エリアがあり、一定の周期で1から6までの数字が書かれたカードがめくられていきます。この数に従って海岸には波ブロックが並びます。しかしこの波が打ち付ける瞬間に波より高い堤防が建てられていれば、農村は水害から守られます。この海岸は全プレイヤーで共通なので、資源を払って誰が堤防を建てるのかというにらみ合いが起こります。

ただし実際に実害が生じるかどうかは、ゲーム終了時の波と堤防の比較で全て決定します。ゲーム終了時に堤防の方が高ければ、これまでの水害は関係なく誰も何も失いません。一方波の方が高かった場合、ヒツジが流されてしまいます。ここでポイントなのは、これまでの堤防への貢献度が低いプレイヤーほど多くのヒツジを流されるシステムになっているという点です。つまり、堤防をたくさん建てた人は堤防が決壊した方が得で、自分の農場ばかり豊かにした人は堤防が決壊すると困る、このジレンマの中での堤防をめぐる駆け引きがゲームを熱く盛り上げるのです。
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緑色の堤防が青色の波1個分持ちこたえ、農村は無事守られた!!

 

プレイの序盤では「堤防になんか気を配っている時間はない!」と感じることもあるでしょう。ただし気が付くとみんなで「これ、やばくない…?」と農村の危機に気が付きます。そのとき、突然協力ゲームが始まるのです。

基本的にはやりたいことをやりやすいデザインのためストレスなくゲームを進められ、堤防という斬新なアクセントをめぐる攻防が時間を忘れさせてくれるため、プレイ時間の割には重い感じは薄いです。これまでボードゲームに慣れている方は、一見ありがちなプレイ感に加えてかなり不思議な感覚を感じ取れる作品だと思います。このモダンなゲームシステムと終了後の心揺さぶられる感覚を、ぜひ味わってみてください。